デスクに呼び込む、小さな静寂。手編みリーフファン誕生の物語
伝統的なヤシの葉編みと現代のワークスペース設計を融合。デスクまわりに静かな心地よさをもたらす、手編みリーフファンができるまで。
デジタル図面から、手編みの温もりへ
7月中旬の蒸し暑い午後のことでした。デスクの上には外付けハードディスクや飲みかけのコーヒー、まぶしく光るモニターが乱雑に並び、部屋の空気はどんよりと重く滞っていました。けれど、モーター音の響く卓上扇風機をつけるのは、ただでさえ騒がしい空間にノイズを増やすだけの気がしたのです。求めていたのは、静かで、手に触れたときに心地よく、アルミ製のPCの横にあっても無機質なデスクに温もりを添えてくれる存在でした。
そこで私たちは、素朴すぎず洗練された建築的ニュアンスを持つ葉のシルエットを描き始めました。目指したのは、精密なプロダクトデザインと素朴な天然素材のあいだを繋ぐこと。オリジナルプロダクトの設計においては、葉の外輪カーブを微調整することに何日も費やしました。手に取ったときは軽やかでありながら、しっかりとした風を生み出す強度を備えたフレームを探求したのです。
検証のテンポを上げるため、スタジオの作業場では3Dプリント技術をフル活用しました。FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンターを夜通し稼働させて何通りもの試作品を出力し、持ち手の長さや手になじむ感覚を細かくテスト。さらに、グリップ部分の繊細な幾何学フォルムを追い込むため、きわめて高精度な光造形(レジンプリント)のプロトタイプを作成しました。職人たちに最終仕様を託す前に、ワイヤーフレームのラインを1ミリ単位で突き詰めたマスターモデルです。
静かな時間を生む、職人の手編み
フレームの形状が決まると、制作の舞台は画面の上から職人の手元へと移ります。地元の作り手が、収穫されたヤシの繊維を一本ずつ手作業で外枠に編み込んでいきます。このアイテムの醍醐味は、凛とした外形デザインと、素朴で温かみのある天然繊維の対比にあります。ひとつとして同じ形に育つヤシの葉がないように、仕上がる扇もすべて世界にひとつだけの表情を持っています。
午後の集中力が途切れる時間帯を想像してみてください。長時間の画面作業やデータチェックで目は乾ききっています。ここでスマートフォンを手に取れば、ディスプレイによる疲労が重なるだけ。そんなとき、このうちわを手に取ることが、体感を切り替えるスイッチになります。ゆっくりと静かに仰ぐと、心地よい風が顔をかすめ、自然と深呼吸が生まれる。それは、忙しい日常の中に意図的につくる「小さな余白」です。
使い込むほど味わいが増す、デスクの相棒
秋が来たら押し入れに仕舞われてしまうような、一過性の季節モノを作りたいわけではありませんでした。年中デスクに置いておきたくなるデザインを目指したのです。洋書のハードカバーに立てかけたり、陶器のマグカップの脇に添えたり。ただそこにあるだけで、デスク全体の印象を穏やかに引き締めてくれます。
- 経年変化の味わい:使い込むうちに、ヤシの繊維は淡い麦わら色から深みのある黄金色へと少しずつ表情を変えていきます。
- 軽やかな操作性:スリムなハンドル設計により、全体で85g以下という軽さを実現。資料を読み込んだり原稿を確認しながらでも、負担なく軽やかに仰げます。
- 洗練されたコントラスト:引き締まったダークカラーの外枠シルエットが、明るいオーク材のデスクやシンプルな白壁に美しく映えます。
デジタル中心の現代のワークスタイルに自然の温もりを取り入れるのは、テクノロジーを手放すことではありません。必要なデジタルツールを使いこなしながら、気持ちを整えてくれる身近な道具とバランスを保つこと。このリーフファンは、そよ風とともにその静かな調和をもたらします。
FAQ
サイズについて教えてください。
持ち手の底面から葉の先端まで約35cm、横幅の一番広い部分で約24cmです。薄型のシルエットのため、デスクのオーガナイザーに立てかけたり壁のフックに掛けたりしても場所を取りません。
天然素材の製品づくりに、どのように3Dプリントを活用したのですか?
3Dプリントは、デザイン検証と人間工学に基づくプロトタイプの製作段階でのみ使用しています。初期のFDMプリントで柄の角度を調整し、精密な光造形プリントで持ち手のマスターモデルを作成しました。実際にお届けする製品は、丈夫な構造骨組みにヤシの繊維を手編みした完全ハンドメイド品です。
お手入れ方法や保管について注意点はありますか?
日常のお手入れはとても簡単です。乾いたマイクロファイバークロスや柔らかいブラシで、優しくホコリを払ってください。手編みの繊維を美しい状態に保つため、極端な湿気や水気のある場所は避けて保管してください。
日常使いに耐えられる耐久性はありますか?
はい、安心してお使いいただけます。単に乾燥した葉を束ねたものではなく、頑丈なワイヤーフレームの輪郭に沿って繊維を密に編み込んでいます。デスクでの普段使いで解けたり形が崩れたりすることはありません。