なぜイルカの形なのか? 音響性能と美しさを両立させたスタジオマイクの開発秘話
有機的な海洋のシルエットが、クリエイターのデスクを彩る本格プロダクトになるまで。流線型フォルムの意図と音響性能の秘密。
海岸のスケッチから、デスクの主役へ
市販のコンデンサーマイクは、無骨な灰色の缶や配管パーツのようなデザインがほとんど。どれも四角く無機質で、ひと昔前から進歩していないように思えました。カメラの前で生き生きと映えるマイクをつくりたい——そう考えたきっかけは、ビッグサーの海岸で目撃したイルカの姿でした。水面をなめらかに切り裂くあの流線形を、なぜ音響機器に取り入れられないのか?
胴体部分に高感度コンデンサーカプセルを収め、しなやかなアーチを描くフォルムをスケッチしました。尾ひれは安定感のあるデスクスタンドへとつながり、なめらかな曲面は声の不要な反射をカプセルから逃がす役割を果たします。この曲線は照明の下で美しく映えるだけでなく、金属の角で生じる不要な回折音を抑えるという音響上のメリットも生み出しています。
アイデアを形にする、ものづくりの裏側
有機的な造形を実用的なマイクへ落とし込む作業は一筋縄ではいきませんでした。音響性能を検証するため、私たちは3Dプリンターを活用した迅速な試作を繰り返しました。初期段階ではFDM方式を用いて内部の容積や配線ルートを検証。素早い試行錯誤により、内部構造の微調整とゲイン調整を効率よく進めることができました。
滑らかな外観をつくり込むため、試作の後半では高精細な光造形(レジンプリント)へ移行しました。レジン素材を使うことで、精密な曲面とXLR端子やダイヤル類のミクロン単位の組み込み精度を実現。デジタルファブリケーションを駆使したプロダクトデザインにより、内部には重量感のある亜鉛コアを配置しつつ、外側は美しく軽量なボディに仕上げています。
デスクに馴染む、新しい佇まい
陽の光が差し込む大きな窓と、ホワイトオークのデスク。モニターや観葉植物の傍らに、朝光を浴びるメタリックなイルカ型マイクが静かに佇んでいる——それだけで、作業スペース全体の空気が一変します。カメラの電源を入れる前から、空間の質を高めてくれる存在です。
配信者やナレーターからは、「機材の印象が変わるだけで、収録時の気持ちまで解きほぐされる」という声が届いています。物々しいスタジオ空間ではなく、開放的なラウンジで話しているかのようなリラックス感が生まれるのです。音質面でも、25mmエレクトレットカプセルが抜けの良い高音と温かみのある中低音を捉え、ノイズの少なさが編集作業の手間を大幅に削減します。
FAQ
見た目重視のデザインですか? 音質面でもプロ仕様と言えますか?
本格的な収録に耐えうる音響設計です。高精度なレジンシェルの内部には、声の温かみと透明感を忠実に捉える25mm単一指向性コンデンサーカプセルを搭載。曲面主体の形状は、一般的な円筒型マイクよりも内部の定常波を抑える効果があります。
イルカのフォルムはどのように製造されていますか?
内部構造の検証にはFDM 3Dプリンターを使用し、外観の製造には高精細な光造形(レジン)技術を採用しています。カメラライトの下でも陰影が美しく映える滑らかな質感を実現しつつ、内部に配置した亜鉛コアで高い安定性を確保しています。
カラーや仕上げのカスタムオーダーは可能ですか?
可能です。自社でプロダクトデザインを手掛けているため、マットパールホワイトや深みのあるオーシャンブルー、手作業による個別のカラーアクセントなど、カスタムオーダーに対応しています。
手持ちのマイクアームに取り付けられますか?
対応しています。本体後方の目立たない位置に標準規格の5/8インチネジ穴を備えているため、市販の多くのマイクアームやデスクスタンドにそのまま装着可能です。