樹皮の肌ざわりをペン先に——樹木を模した万年筆が、静かな朝のノートタイムを取り戻してくれた話
無機質なデスク環境に自然の質感をプラスし、静けさと集中を取り戻すジャーナリング習慣のヒント。
朝の7時15分、デスクに陽の光が差し込む。白樺の天板をすっと横切り、淹れたての紅茶から立ち上る湯気を照らす時間。メールや通知の音に追われる前のこの静かなひとときに、私は一本の万年筆を手に取る。まるで深い森の奥からそのまま生えてきたかのような佇まいのペンだ。
軸(バレル)にはねじれた樹根や密やかな樹皮の凹凸、指先へと自然に寄り添う節の意匠が刻まれている。オフィス用品特有の味気なさとは無縁の存在だ。真鍮製のデスクランプやリネン紙のノートの横に置くだけで、無機質になりがちなモダンな書斎に豊かな自然の温もりが溶け込んでいく。
森の記憶を形にする:トレイルの触感を作業机へ
このペンの構想は、パシフィック・ノースウエストの湿ったトレイルを歩いていたときに生まれた。古びたスギのゴツゴツとした樹皮を見つめながら、かじかんだ手で安価なプラスチックペンを握りしめていた私。ふと、日頃使う道具がいかに現実の触感から切り離されているかに気づかされた。なぜ私たちのワークスペースは、冷たい金属や滑らかなガラスばかりなのだろう。必要なのは、手元を落ち着かせる「確かな手触り」ではないだろうか。
自然の造形美と筆記具としてのバランスを両立させるため、数ヶ月に及ぶ試行錯誤が始まった。試作段階では卓上3Dプリンターを活用し、手にしたときの収まり具合を徹底的に検証。まずは粗めのFDM方式プリントで出力し、軸の太さや重量バランス、重心の位置を高速で調整していった。
握り心地が固まった後は、高精細なレジンプリントでマスターモールド(原型)を作成。手彫りだけでは量産が難しかった繊細な樹皮の彫りや木目の微細な凹凸までも正確に再現した。現代のカスタムプロダクトデザインの技術を駆使し、手仕事のぬくもりを損なうことなく、実用性と耐久性を兼ね備えた一本へと仕上げている。
毎朝のジャーナリングという儀式
樹木を思わせる万年筆を手に取ると、白い紙に向き合う姿勢そのものが変わる。買い物リストを慌ただしく殴り書きするためのペンではない。深く息を吐き、キャップを外し、コンバーターに深みのあるオリーブインクを満たす。
- 重みとバランス: 長文のノートを書き進めても手が疲れない、程よい重厚感と軽快さを兼ね備えた重量設計。
- 心地よいグリップ: 樹皮を模した凹凸が指に自然にフィット。汗ばむ夏の朝でも滑らず、吸い付くような握り心地を保ちます。
- インクの走り: にじみや引っかかりなく、上質なコットン紙の上をなめらかに滑る信頼のステンレス製M字(中字)ペン先。
朝日が差し込む部屋でノートを開き、手元に伝わるしっとりとした触感を楽しむ。それは小さな聖域に身を置くような静かな時間だ。心が落ち着き、散らかっていた思考が徐々に整っていく。穏やかな筆記習慣をつくりたいなら、まずは手に触れる道具からこだわってみるのが何よりの近道かもしれない。
FAQ
樹皮の凹凸があって、長時間の筆記で手が痛くなりませんか?
ご安心ください。見た目はゴツゴツとした木肌のようですが、指が当たる部分は人間工学に基づいて滑らかに処理されています。3Dプリンターでの試作を何度も重ね、角のある圧迫感を与えずに指先を自然に支えるグリップ形状を追求しました。
ペン先のサイズは何が付属しますか? また、交換は可能ですか?
標準仕様として、滑らかで安定した書き味のステンレス製M字(中字)ペン先を装着しています。欧州共通規格のネジ式ペン先ユニットを採用しているため、お好みに合わせて極細(EF)や太字(B)、スタブペン先などに簡単に交換可能です。
この樹木モチーフのデザインはどのように作られたのですか?
原生林のスギの樹皮に着想を得た手描きのスケッチからスタートしました。FDMプリントでグリップ感を確認したのち、高精度なレジンプリントで原型のディテールを再現。鋳造と熟練の職人による手仕上げを経て、この微細な質感が生まれています。
文房具好きな人へのギフトとしてカスタム加工は可能ですか?
はい、承っております。柔軟なカスタムプロダクトデザインのプロセスを取り入れているため、軸の根元部分(根の造形付近)にイニシャルを刻印したり、お相手の筆圧に合わせてペン先のインクフローを調整してお届けすることができます。