サイバーネティック・マッスルの造型:スチール、カーボンファイバー、ワイヤフレームが描く精度
古典解剖学の彫刻美とハイパーカーの構造解析が出会った、高精度ワークショップでの造形記録。
深夜のアトリエ。作業台の片側には古代ギリシャ・ローマ時代の胸甲レプリカ、もう片側にはトラックバイクから取り外した炭素繊維のフレームが横たわっていました。一方は冷たい金属で人体美を象り、他方は計算されたジオメトリで極限の速度を追求する——この強烈な対比を目にした瞬間、プロダクトの構想が決まりました。肉体の力強さとデジタル幾何学を融合させ、身に纏うマッスルアーマーを構築することです。
ワイヤフレームから実像へ:デジタルモデリングと試作の軌跡
三角筋、大胸筋、腹筋の曲線を鋭利なポリゴン面へと落とし込む作業は一筋縄ではいきません。面取りの角度がわずか数度狂うだけで、身体の一部のようになじむはずの装具が無骨な小道具に成り下がってしまいます。肩の可動域を奪うことなく、硬質な光の反射を最も美しく拾うラインを探るため、身体の支点と幾何学データを照らし合わせながら数か月間にわたりモデリングの微調整を重ねました。
試作段階では複数の造形手法を組み合わせました。初期のサイズ検証では大型のFDM printing(FDM 3Dプリント)を用い、実際のトルソーに合わせてフィット感や可動性を直に確認。精密な可動ジョイントや細かなワイヤフレーム構造には、解像度の高いresin print(光造形レジン)パーツを採用しています。このハイブリッドなプロセスを経ることで最高精度の原型が完成し、カーボンファイバーの積層や磨き上げたスチールパーツの組み立てへと落とし込むことが可能になりました。
意図を持ったデザインが、圧倒的な存在感を解き放つ
スチールとカーボンファイバーで構築されたアーマーは、どのような場面で真価を発揮するのか。私たちが想定したのは、デザインの美学を崩さずに圧倒的な存在感を表現したいと願うクリエイターたちです。
- Stage and Screen: 安っぽいプラスチック感を排除し、カメラの前で重厚な存在感を放つ主役級の装備を求める映像作品やステージ演出に。
- Haute Couture & Runway: ウェアラブル技術とアヴァンギャルドな美意識を交錯させるスタイリングに。
- Private Galleries & Lofts: 装着時はもちろん、ウォールマウントに飾った際も強烈なインダストリアル・アートとして成立するコレクションに。
実際に身に纏うと、重心が骨盤と肩回りに心地よく分散されます。ブレのない確かな重量感と、背筋が伸びるような緊張感をもたらす着用感です。
個々の体格に最適化されるオーダーメイド構造
体型は人それぞれ異なり、既製品の胸甲では狙い通りのシルエットを描くことができません。本プロダクトではcustom product design(カスタム設計)を前提としています。採寸データや3Dボディスキャンデータをもとに、着用者の身長や肩幅に合わせてワイヤフレーム構造全体をミリ単位でスケーリングします。
パラメトリック設計と先進的な3D printingワークフローを連携させることで、カーボンプレートやスチールの背骨構造を胸郭のカーブへ精密に密着させます。出来上がるのは、単に羽織るだけの甲冑ではなく、肉体の一部として機能する第二の皮膚です。
FAQ
サイズ調整用のデータはどのように測定しますか?
3Dスキャンデータ、またはご自宅で測定していただく上半身8箇所の基本サイズを使用します。カスタム設計のプロセスを通じてデジタルモデルを修正し、カーボンプレートが肩、肋骨、胸部に完璧にフィットするよう調整します。
鑑賞用ではなく、実際に着用することはできますか?
完全に着用可能です。内側には通気性に優れるクッションパッドを配し、調整可能なレザーハーネスで固定できます。重厚なスチールの質感に反し、主素材にカーボンファイバーを使用しているため、本体重量は約2.7kg(約6ポンド)に抑えられており、長時間の着用でも負担がかかりません。
製作において3Dプリント技術はどのような役割を果たしていますか?
FDM方式で実寸大のプロトタイプを出力し、迅速なフィット感チェックを行ないます。さらに、微小な誤差も許されないメカニカルジョイントや鋳造用原型の製作には高精細なレジンプリントを採用しています。従来の金属鋳造では不可能な複雑な幾何学ワイヤフレーム構造も、積層造形だからこそ実現できています。
注文から完成・届くまでどのくらいの期間がかかりますか?
個別のデータ調整、カーボンファイバーのハンドレイアップ積層、スチールパーツの鏡面研磨など手作業の工程が多く含まれるため、デジタルフィッティングモデルの承認から完成まで通常4〜6週間ほどいただいております。